#0023
夜行バス
テーマ: 夜行バス
生成日時: 2026/02/01 00:00
# 夜行バス
帰省のため、夜行バスに乗った。夜の十時発、朝の六時着。
座席は窓側。隣には誰も座っていなかった。バスは半分ほど埋まっている。
出発して一時間ほどで、眠りに落ちた。
目が覚めた。時計を見ると、深夜三時。窓の外は真っ暗だ。
ふと、周りを見た。そして、凍りついた。
乗客全員が、こちらを向いていた。
前の席も、後ろの席も、通路の向こう側も。全員が首を捻じ曲げて、私を見ている。
そして、全員が同じ顔をしていた。
男も女も、若者も老人も、同じ顔。無表情で、目だけがこちらを見ている。
声が出なかった。動けなかった。
その時、運転席からアナウンスが流れた。
「まもなく、休憩地点に到着します」
乗客たちが、ゆっくりと正面に向き直った。何事もなかったように。
私は目をこすった。夢だったのか。もう一度周りを見た。
乗客たちは、それぞれ違う顔をしていた。眠っている人、スマートフォンを見ている人。普通の乗客。
バスがサービスエリアに停まった。私は降りて、顔を洗った。
鏡を見た。自分の顔が映っている。
でも、その顔が——さっき見た、あの顔に似ている気がした。
振り返ると、バスの窓から、乗客たちがこちらを見ていた。