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海辺の廃旅館
テーマ: 海辺の廃旅館
生成日時: 2026/01/24 00:00
# 海辺の廃旅館
廃墟探索が趣味だった。その日は、海沿いの古い旅館を訪れた。十年前に閉館したという。
建物は思ったより状態がよかった。玄関の引き戸は開いたまま。中に入ると、埃の匂いと、かすかに潮の香りがした。
ロビーを抜け、廊下を進む。客室のドアが並んでいる。どの部屋も空っぽだ。畳が腐り、壁紙が剥がれている。
二階に上がった時、異変に気づいた。
廊下の奥に、明かりが漏れている。
近づいてみると、一室だけドアが閉まっていた。隙間から、オレンジ色の光が漏れている。中から、テレビの音らしきものが聞こえる。
ノックした。返事はない。ドアを開けた。
部屋は——営業中のように、きれいだった。布団が敷かれ、テーブルには急須と湯呑み。テレビがついている。
「いらっしゃいませ」
声がして、振り返った。仲居の格好をした女性が立っていた。
「ご予約のお客様ですね」
「いえ、予約は——」
「お部屋にご案内します」
女性は微笑んだ。でも、目が笑っていなかった。
私は逃げ出した。階段を駆け下り、玄関から外に出た。
車に戻り、スマートフォンでこの旅館を検索した。
画面には「404 Not Found」と表示された。
このページは存在しません。
でも、確かに建物はそこにある。さっきまで、中にいた。
もう一度検索した。何度検索しても、同じ結果。この旅館は、インターネット上に存在しない。
車を出そうとして、バックミラーを見た。
二階の窓から、誰かがこちらを見ていた。