#0057
複製された部屋
テーマ: 複製された部屋
生成日時: 2026/03/07 00:00
# 複製された部屋
出張先のホテルで、部屋に入った。
足が止まった。
自分の部屋だった。
自宅の部屋と、全く同じレイアウト。同じ家具の配置。同じカーテンの色。同じ本棚。同じベッド。
ありえない。ここは地方のビジネスホテルだ。自宅から五百キロ離れている。
フロントに確認した。「部屋を間違えていませんか」
「いえ、お部屋番号は合っています。何か問題が?」
「部屋の内装が、自宅と同じなんです」
「お客様のお部屋は標準的なシングルルームです。特別な内装ではありません」
部屋に戻った。やはり、自宅と同じだった。
細部を確認した。本棚の本。自宅と同じ並び。でも、一冊だけ違う本があった。
「複製の書」というタイトル。見たことがない。
手に取った。開いた。
白紙だった。でも、ページをめくるたびに、文字が浮かび上がってきた。
「これはコピーです」
「あなたの部屋のコピーです」
「あなたの人生のコピーです」
「あなた自身のコピーです」
本を閉じた。部屋を見回した。
全てが少しずつ違っていた。本棚の本の順番。カーテンの皺。ベッドのシーツの模様。微妙に違う。コピーだから、完璧ではない。
鏡を見た。自分の顔が映っていた。
でも、その顔も、微妙に違う気がした。